土湯伝統こけし

土湯伝統こけし

ままごとの道具から芸術品へ 

 鳴子、遠刈田と並びこけしの三大生産地に数えられる土湯温泉。首を回すとキイキイと鳴く「土湯こけし」は、約160年前に誕生したと伝えられる伝統民芸で、9名のこけし工人がその伝統を守り継いでいます。一片の木の魂が、工人達の手で削られ、磨かれ、少しずつ生命が吹き込まれ、愛らしくやさしいこけしの姿が生まれます。土湯こけしは、頭が比較的小さく、頭頂には墨の蛇の目模様が描かれ、前髪の両側には紅のかせ(紙飾り)が大きく描かれているの特徴です。胴はロクロ線を主とした模様を基本に、草花などの模様がつけられています。

 

TUCHIYU DENTO KOKESHI

工房紹介

 

  • 土湯温泉観光協会
    TEL 024-595-2217
    ※絵付け体験の問い合わせ
  • 土湯こけし伝統工人組合
    TEL 024-595-2329
    〒960-2157
    福島市土湯温泉町字杉ノ下21

土湯こけしの歴史

写真 こけしは、東北で生まれ育った、歴史と伝統を持つ工芸品です。地域の特徴やこけし工人の工夫などで、 構造、顔、胴の模様が異なり、地域別に系統をつけて、それぞれの地名をつけて呼ばれています。土湯を含め11系統に分けられ、いずれも温泉地が発祥です(土湯温泉は、福島県内で唯一のこけしのふるさと)。昭和15年に「こけし」と名前が統一されるまで、土湯では「でこ」「きぼっこ」と呼ばれていました。
  土湯こけしは、今から160年ほど前(江戸後期)に誕生しました。今でこそ季節に関係なく車で行くことができる土湯温泉ですが、昔は1年の3分の1は雪に覆われる山深い場所。「田方作物などなく、温泉場であるゆえ、平日入浴人の宿をしていささかの木銭を取り、その他は、男女山仕事に相励み、あるいは挽地、下駄、棒類の細工を持って生活している」と古文書に綴られてるように、土湯で暮らす人々にとって、木地業が大切な生活の糧でした。 しかし、木工製品は、明治期に入るとブリキやセトモノなどの素材に圧され、次第に木地師の仕事は小物家具や子供玩具の製造へと推移します。土湯こけしを最初に作り始めたのは佐久間亀五郎氏といわれ、後にその長男・弥七氏が首の回るこけしを創案したと伝えられています。明治20年代になると、ロクロの改良などもあって土産品として定着、人気を集めるようになります。
 明治36年の大洪水によって被害を受け、こけし製作の中心であった一族が土湯を去り、一時期はこけし製作が下火になりましたが、新しいこけし作りへの情熱を燃やした工人の努力が実り、再び注目を集め、こけしブームが訪れました。丁寧な仕上げを施し、洗練されたこけしは、シンプルな美しさが評価され、鑑賞用や美術工芸品としての価値も認められるようになり現在に至っています。

職人の技を知る

写真 こけしを作る人は「こけし工人」と呼ばれます。昔は木地師、 ろくろ師と呼ばれていました。土湯こけしは比較的頭が小さく、胴も細めです。「くじら目」と呼ばれる半月型の目と、蛇の目模様の髪、くびれた胴と胴に描かれたしま模様も土湯ならではです。こけしを作る技術は、受け継がれた技術に道具の改良などによる新しい技術を取り入れ、確立されてきました。例えば、こけしの表面を滑らかに仕上げる作業には、サンドペーパーのほか、歯磨きとして使われた木賊トクサが使われます。
 土湯こけしの材料は、ミズキやカエデなど土湯温泉近くに原生する木などが使われています。頭部は、数種類のバイトと呼ばれるカンナのような刃物を使って削り、サンドペーパーと木賊で磨き、髪の毛の部分を色づけします。胴体は、大きな彫刻刀で大まかに削り、彫刻刀を小さなものに変えながら、細かく整形していきます。削り終わった後に、頭部を入れる穴を掘ります。頭部同様にサンドペーパーと木賊で胴体を滑らかにしていきます。ロクロをまわした状態で、胴体に複数色で手早く色づけすると、無垢だった木があっという間に衣装をまとったこけしに変身します。若手工人のひとり陣野原幸紀さんは、「この頃やっと自分の思いが筆の走りに表れるようになった」と話してくれました。「伝統の型の持つよさを最大限に引き出して復元するのは容易なことではない」とも。陣野原さんが慣れた手つきで微調整を施すと、頭部の凸部分が胴の小さな穴にすっぽりと収まります。特徴のひとつであるキイキイという音が出るのは、この微妙なバランスがなせる技です。ロクロから取り外し、こけしの顔を描き、完成です。
 平成19年12月、土湯温泉街に土湯こけしの製作見学ができる工房『土湯伝承館』がオープンしました。ここでは、毎週土、日曜日と祝日の午前10時から午後3時まで、こけし工人による実演が無料で見学できます。また、『土湯見聞録館』には多様な年代、系統、大きさのこけし約1,000体が揃えられ、午前8時半から午後5時半まで無料で見学できます。土湯温泉内では、みやげ店などで絵付け体験もできるので、オリジナルこけしを作ってみるのもおすすめです。