• 第1回 菅生雅文 ( ツーリングマガジン 『 OutRider 』 編集長 )
  • 第2回 鈴村典久 ( バイク誌『東本昌平RIDE』シリーズ編集長 )
  • 第3回 渡辺昌彦さん ( 月刊バイク誌『Mr. Bike BG』編集長 )
  • 第4回 佐々木 節 ( 『大人のバイク旅』シリーズ編集長 )
  • 第5回 吉田宣光 ( 株式会社 八重洲出版 二輪事業部 統括副部長 )
  • 第6回 中村淳一さん ( バイク雑誌「BikeJIN」編集長 )
  • 第7回 五十嵐重明 ( 月刊誌『モーターサイクリスト』編集長 )

渡辺昌彦さん ( 月刊バイク誌『Mr. Bike BG』編集長 )

 今年の正月、家内の実家・仙台に行った足で石巻を訪れました。あの3.11から10ヵ月ほど経ち、主だった道路は瓦礫が片付けられ車で移動出来るものの、街中も未だに傷跡だらけで、あの日テレビの画面に映し出された、まるで良くできたCGのような惨劇が、多少薄まっているだけだと感じました。
“瓦礫”と言ってしまったら単なるゴミになってしまいますが、それらはそこに住む人達の生活の証しの欠片が集まったものです。それらが山となっている状況を目の当たりにすると、自然と涙が流れました。

 BGでは震災直後の昨年4月16日に長野県・上田市で「BGチャリティミーティングin上田」を開催しました。元々上田市の春の祭礼の中で行う予定だったミーティングを震災のチャリティとしたのですが、嬉しいことに多くのバイク乗りたちが理解し参加してくれて、多くの義捐金が集まりました。チャリティオークション、募金合わせて60万2112円という額になり、これは上田市観光課を経由して後日、福島県、宮城県、岩手県の各行政に3等分された額が渡されました。
 このチャリティミーティングを掲載した6月号以降も、7月号では「東北のバイク乗りより!」と題して、被災したバイク乗りたちの元気な姿のミーティングを、8月号では「この夏、僕らに出来る事…東北へ行こう」という提言記事と「東日本大震災ボランティアの声」と題し、災害ボランティアで被災地へ行ったライダーのレポートを、9月号では、「福島県いわき市発・新たな一歩」と題し、被災したバイク乗りの津波で海水につかった絶版愛車の再生レポートといわき市在住のライダーの声を届けたり、東北で行われたミーティングの紹介、そして復興の現場でバイクがいかに役立っているかというレポートも。その後も毎号東北で行われたミーティングや、国道45号線をたどるレポートなどを紹介し、東北関連の記事は誌面から絶えることなく続いています。

 それはバイク乗りたちが、いかに東北の復興を願い、行動しているかの証左だと思います。そんな中、今年3月号からは「財団法人福島県観光物産交流協会」のライダー誘客事業に伴う、PR担当者による連載「RISE Fukushima 今こそ福島へ!」も始まりました。福島からライダーへ向けて情報発信をしている専用観光サイト“福島RIDER'Sナビ”と連携した、ホームページ誘導型の誌面です。実際にその内容を見て、ゴールデンウィークには福島を訪ねた読者さんが多数いて、ハガキも頂戴しています。

 バイク乗りたちは行動しています。
 そこに行って何もしなくても、ただ、ディスプレイを通して見たものとの差を肌で感じてしっかり記憶にとどめてくれればいいと思います。そして、そこまで行って見た者として誰かに伝えることがあれば、それは立派に行動したと言えるでしょう。
 行って「見る」「感じる」ということが、事を「共有する」上で重要なことです。日本人として、この未曾有の災害を自分のこととして記憶にとどめることが必要だと感じたライダーたちが東北へ行っています。風評に惑わされずに、自分の頭で考え、(バイクに乗って)自分の脚で向かい、そして自分の眼で見て、自分の心に刻んでいます。

 この1年、何度も目にしてきたものに、同心円が描かれている地図があります。福島第一原発を中心とした3キロ、10キロ、20キロ……紙面や画面で見れば掌に載ってしまうほどの小さな円ですが、この円の中には何万人という人々のごく当たり前の平和な生活があったのです。収束は未だ見えません。しかも、この7月、飯舘村には帰還困難区域との境にバリケードが設けられました。希望を取り戻せない人も多くいると想像します。

 風化させてはいけないことだと思うから、BGはこれからも出来る限りの「東北ページ」を作り続けることでしょう。被災地を思い続けること、それくらいしかできないけれどやっていきます。まだ、何も終わってはいないのだから。

(2012年7月現在)

  • 第1回 菅生雅文 ( ツーリングマガジン 『 OutRider 』 編集長 )
  • 第2回 鈴村典久 ( バイク誌『東本昌平RIDE』シリーズ編集長 )

  • 第3回 渡辺昌彦さん ( 月刊バイク誌『Mr. Bike BG』編集長 )
  • 第4回 佐々木 節 ( 『大人のバイク旅』シリーズ編集長 )
  • 第5回 吉田宣光 ( 株式会社 八重洲出版 二輪事業部 統括副部長 )
  • 第6回 中村淳一さん ( バイク雑誌「BikeJIN」編集長 )
  • 第7回 五十嵐重明 ( 月刊誌『モーターサイクリスト』編集長 )

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