いわき市民の日々の台所として、鮮度の良さと安さ、便利さを貫く

いわきの魚介の安心と安全を守り、風評被害を乗り越えて地場の魚の価値を創出。伝統と新たなアイデアで漁業と食文化を盛り上げます。

創業大正12年福島県最大級の魚屋、株式会社おのざき。福島県沖の潮目の海で水揚げされる「常磐もの」魅力を世界へ発信します。

おのざき平総本店

平の伝統料理「火山」。そのおいしさを広める

がらんがらん、とベルを鳴らし、社長である小野崎幸雄さんが10時30分を告げます。多くの人が足を止め、大きなガラス越しに燃え上がる炎を近くで見ようと人垣を作ります。これは、『おのざき平総本店』の名物・「火山(ひやま)」の調理実演。「火山」とは鰹の藁焼きのことで、名の由来や成り立ちについては諸説あるそうですが、平、そして小名浜で鰹といえばこの「火山」が最高の調理法として知れ渡っているそうです。ガラス越しにも伝わる熱、ばちばちと皮と脂が焦げる音、芳しさ。ここで炙られた「火山」はもちろん店頭に並び、隣接する「潮目食堂」で味わうことも。 「10時30分と11時30分の2回、鰹のあるうちは毎日やっています。福島は鰹の消費量が全国2位なんですよ。鮮度のいい鰹の中からより質のいいものを選んで“火山にかける”。藁の火で一気に炙ったら、氷水に10分から20分ほど漬けて〆るんです。これが「火山」の味の決め手なんです」 鮮度の良さに加えて目利きの良さ、調理の良さ。この真剣さが、『おのざき平総本店』に寄せられる信頼の源なのでしょう。震災からしばらく、地元の漁師さんたちは漁に出ることができず、地元の魚が市場から消えました。しかし小野崎さんたちは「いわきの食卓から魚を消してはならない」と全国に呼び掛け、魚介類を店頭に並べました。 「それでもね、やっぱり私たちは地元の魚が恋しいんですよ。漁が再開されて味わった常磐もののおいしさに、前浜のすばらしさを改めて知りました」 鰹にヒラメ、ヤナギガレイ、メヒカリ、アンコウ。いわきでは、魚が季節を教えてくれます。

「おのざき」名物の「かつおの火山定食」(時価/この日は1580円)。

海の変化、食文化の変化に適応した商品づくり

「最近、温暖化によって獲れる魚に変化が出てきていますよね。今まで潤沢に獲れていたものが獲れなくなる日が来るかもしれない。環境を整備して再生することも私たちの課題ですが、今までは捨てられていた未利用魚をちゃんと活かして流通させることが魚屋としての仕事だと思っています」 アカエイの唐揚げやカナガシラのココナッツカレーなどはその代表選手。4代目を継ぐ小野崎雄一さんのアイデアが活きたおのざきオリジナルです。また、震災やコロナ禍を機に家庭で食卓を囲む機会が増えたこと、魚の食べ方が変化してきたことを鑑み、調理済みの煮魚、鍋セットなど簡単な調理で楽しめる提案も多彩に展開しています。 「火山」の〆が完了し、「潮目食堂」も賑わってきました。厚切りの「火山」は脂がたっぷりのった腹側とさっぱりした背側の両方が楽しめ、ワサビに生姜、ニンニクと薬味もいろいろ。「火山定食」には炊きたてごはんと粗汁、おのざき自慢の珍味の小鉢も付いています。藁の香り芳しい鰹は、噛みしめるごとにじんわりと旨みがあふれ、ごはんが進むこと間違いなし。いわきの魚を愛する心意気が、この味わいに満ちています。

おのざき平総本店 代表 小野崎幸雄さん

2009年、3代目の代表取締役に就任。2011年に起こった東日本大震災時は、自らも苦境の中、津波で製造ラインを失った地元業者を励ますため商品を携えて首都圏に何度も足を運びました。