古民家の再生とコミュニティ&ネットワークの創生をカフェ空間で

高齢化の進む村内にカフェという新たな魅力を生み出し、未来につながる「人と人を繋ぐ場所」としても活かしています。

料理も器も家具も手作り! 五感で楽しむ古民家カフェ「秋風舎」

秋風舎

モリアオガエルのゆりかごで

川内村の自然と人々を愛し、毎年のように村を訪れていた詩人・草野心平。彼の第一詩集である「第百階級」は、「秋の夜の会話」という一篇から始まります。 「さむいね ああさむいね」から始まるカエルたちの会話は、秋を迎え冬眠という小さな死を待つカエルたちの何ともいえない哀切をうたった、まさに草野心平ならではの一篇です。 ここ『秋風舎』のオーナーである志賀風夏さんは、作陶やカフェ経営と並行して「かわうち草野心平記念館天山文庫」の管理人を務めていることもあり、カフェの最奥には草野関連の作品集や文芸書、研究書がぎっしり。 飲みものを手に、この書庫でおこもりを楽しむファンもいるようです。2023年4月に『秋風舎』としてオープンした築200年の古民家は、いまは亡き風夏さんの父・敏広さんがいわき市から移築したもの。 「もともとは京都で作陶していた両親が、新たな暮らしと窯を求めていたところで出会った古民家でした。取り壊しが決まっていたこの建物を何とか残して移築したい、と場所を探すうち、いちばん気に入ったのが川内村。別に母屋も建てましたから、ここは父の趣味の空間。ギャラリーやコンサート、作品を使っての食事会などを開いていました」 しかしそんな愛おしい日々は、震災によって一時断絶してしまいます。全村避難となった川内村を離れ、鎌倉に避難した志賀さんご夫妻でしたが、2012年の避難指示解除を受けてすぐに帰村。高校、大学進学で村を離れていた風夏さんも2017年には村に戻り、川内村への愛を実感します。

カルダモンやクミンを効かせたスパイスカレーとチキンのトマト煮の「あいがけセット」(1300円)

もとからある素晴らしいもの。その魅力を現代的な手法で伝える

「川内村はほんとうに豊かないいところ。けれど、率直に言ってしまえば、村の未来を担う若い人たちが村で暮らしたいと思えるような魅力を伝える術がこれまではなかった。これからの村のために、情報交換や発信の場、集いの場、人と人とを緩やかに繋ぐ場をつくれないかな、と考えていた時に、“ここにあるじゃん!”とこの古民家を思い出したんです」 震災とコロナ禍を経て、物置同然になっていた古民家。まさに青い鳥のようにその存在に思い至った風夏さんは、両親の協力を得ながらカフェづくりに取り組みました。“陶芸は仕事、木工は趣味”と言う敏広さんの自作の家具と好きだった骨董は、古民家の造りにしっくりと馴染み、古き良き時代を彷彿させます。メニューには、川内村の野菜をたっぷり使ったカレーやシチュー、パスタなどが並び、ドリンクも村や近隣のエリア由来のものを揃えています。 「市場に出すほどは多くない、けれど自分の家では食べきれないほど多い。そんな農家さんも多いので、日々たくさんのお野菜をいただくのですが、お客さんの“おいしかった!”と言う声を直に聞いて、“初めて味の感想を聞いたのよ”なんて人も。やっぱり張り合いになるようで、農家さんと観光でいらした方たちの交流の場にもなっていますね。村での暮らしに興味のある若い方たちに、人を紹介することもあります」 木戸川の源流、モリアオガエルのゆりかごの傍らで、『秋風舎』は開きます。川内村の内と外を繋げる「窓」を。

秋風舎 志賀風夏さん

陶芸家、「かわうち草野心平記念館 天山文庫」の管理人、そして『秋風舎』オーナーという三足のわらじを履く。川内村の旬野菜を使ったカレーや、お皿にたっぷりと多彩に添えられたおかずのおいしさにも定評あり。