天を映す鏡のように美しいことから『天鏡湖』とも呼ばれる猪苗代湖。福島県の中央部に位置し、風光明媚な観光地として多くの人が県内外から訪れます。

「天鏡湖」という別称のルーツは明治時代にさかのぼるといわれます。1907年(明治40年)、東北地方を旅行された有栖川宮威仁親王殿下は、猪苗代湖畔を巡遊された際、その風景の美しさをほめ称え、湖が見える場所に別邸を建てることをお決めになりました。そして翌年、ルネッサンス様式を取り入れて完成した洋館が「天鏡閣」です。天鏡閣という名は、1908年に当館に滞在された皇太子(大正天皇)が館からの眺めを称え、漢詩の一節「明湖落天鏡」から命名なさいました。ここから誰ともなしに猪苗代湖を天鏡湖と呼ぶようになったと推測されます。現在は、天鏡閣を取り囲む木々が生長したため館内から湖を望むことはできませんが、国の重要文化財として一般公開されている館内を、往時に思いを馳せながら巡ってみてはいかがでしょうか。