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2025.11.28(金) 09:00 取材記事(教育旅行)広島県立広島井口高等学校が福島県で初めて修学旅行(ホープツーリズム)を実施しました

請戸地区を見渡す生徒たち(大平山霊園)

FPから棚塩産業団地の説明を受ける

伝承館で震災について学びを深める

福島RDMセンターの見学

[日程] 令和7年10月20日〜24日(福島県内1泊)
[学校名・学年・人数] 広島県立広島井口高等学校 2年生 216名
※10月21日に実施したホープツーリズムは、6コースに分かれて行われ、今回は西久保先生のクラス(41名)を取材させていただきました。西久保先生と生徒の皆さんがこのコースを選んだ理由の一つに、福島RDMセンターの取り組みがあります。震災で被害を受けた地域から技術革新を巻き起こす同センターのコンセプトに魅力を感じ、復興の歩みを学ぶだけでなく、「復興後に地域がどのような未来を切り拓いていくか」を学べると考え、このコースを選択されました。

[取材内容]
 広島県立広島井口高等学校が修学旅行で福島県を訪れ、ホープツーリズムを通して震災と復興について学びました。
 はじめに双葉町・浪江町でフィールドワークを実施。フィールドパートナー(FP)がバスに同乗し、双葉町の新山地区商店街やJR双葉駅前を車窓から見学しました。新山地区商店街には、震災当時のまま残された倒壊した建物もある一方で、駅前は新しい建物や道路が整備されており、生徒たちは少しずつ再生していく町の姿を感じ取っていました。続いて訪れた震災遺構浪江町立請戸小学校は休館日のため外観からの見学となりましたが、津波で1階部分が浸水した校舎を目の当たりにし、生徒たちは驚いた様子でカメラを向けていました。
 次に訪れた大平山霊園では、フィールドパートナーから請戸地区が津波被害を受けた当時の状況や、請戸小の児童たちがどのように避難したのかというエピソードを聞きました。「災害はいつどこで起こるかわからない。だからこそ備えと判断が命を守る」という説明に、生徒たちは真剣な眼差しで請戸地区の風景を見つめながら耳を傾けていました。棚塩産業団地の海光の丘からは、水素エネルギー研究フィールドや高度集成材製造センターなどを眺め、新しい産業や最先端技術によって未来を切り拓こうとする浪江町の姿に触れました。
 午後は東日本大震災・原子力災害伝承館を訪問。通常火曜は休館ですが、この日は臨時開館しました。震災当時の映像や資料をひとつひとつ丁寧に見学し、フィールドワークで見聞きした出来事と重ね合わせながら理解を深めました。津波や原発事故がもたらした被害の大きさ、そしてそこから立ち上がろうと努力を重ねてきた人々の姿に触れ、生徒たちは災害の記憶を伝え続けることの大切さを感じ取っていた様子でした。
 最後に訪れた福島RDMセンターでは、會澤高圧コンクリート株式会社の大橋未来さんから、同社が手がける最先端技術について説明を受けました。発熱コンクリートや自己治癒コンクリートなど、科学技術の可能性と、被災地から未来を支える産業の力を目の当たりにしました。代表生徒からは「困難な状況の中でも未来を見据えて取り組む姿に感銘を受けました。今回の学びを自分たちの進路や生き方に生かしたい」との言葉が寄せられました。

[生徒のコメント①]
「浪江町の請戸小学校は津波で1階がのみ込まれ、体育館には卒業証書授与式の看板がそのまま残っており、当時のまま時間が止まってしまったように感じました。災害はいつかではなく、いつ自分の身に起きてもおかしくないものだと実感しました。また、大丈夫だろうという思い込みをせず、災害時には迷わず行動することの大切さを学びました。伝承館では福島第一原発で3基が水素爆発していたことを知り、もしもう1基が同じ状況に陥っていたら、日本全体に大きな影響が及んだ可能性があると説明を受け、紙一重の状況だったのだなと思いました。RDMセンターでは、コンクリートが自らひびを修復する技術に驚き、未来に向けた研究が進んでいることを知りました。今回感じた福島の復興の姿を家族や友人に伝えたいと思います。」
(2年 原 奏多さん)

[生徒のコメント②]
「今回の福島での修学旅行で、特に印象に残ったのは大平山霊園です。津波が押し寄せたとき、この高台に避難できた人は助かり、高台より低い場所にいた人は被害を受けたという“命の分かれ目だった場所”であると聞き、胸が詰まりました。海から距離があるように見える地点まで津波が到達したことに、災害の力の大きさと恐ろしさを改めて実感しました。また、フィールドパートナーの方が自身の経験を交えて話してくださり、資料だけでは知ることができないその場にいた人の思いに触れることができました。伝承館では、かつて地域の誇りだった原子力発電所が、災害によって大きく印象が変わってしまったことを知り、心に残りました。福島で復興に向かう人々の姿を見て、自分の住む広島ともつながりを感じました。南海トラフなどの災害に備えるためにも、今回学んだことを家族と話し合いたいと思います。」
(2年 鈴木 ららさん)

[先生のコメント]
「ホープツーリズムでは、時間が止まったままの家屋と、新しく建てられた建物が混在する風景が特に心に残りました。震災の爪痕が残りながらも、復興に向かって立ち上がった人々の姿から、地域が背負ってきた時間の重さを感じました。伝承館で見た、かつて原子力発電を前向きに捉えたポスターは、教育によって価値観や判断が変わることの大切さを改めて考えるきっかけとなりました。請戸小学校では“正しい判断が命を守る”ということを生徒が自分事として考えていたように思います。震災を知らない世代が増える中で、この出来事を風化させないことは私たちの役割です。復興をどのように進めていくのか、自分たちにも関係する課題として考え、いざという時に一歩踏み出せる生徒に成長してほしいと願っています。」
(教諭 西久保 光二先生)

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