INTERVIEW インタビュー

会津

若喜商店 代表取締役 冠木 紳一郎さん

じっくりと時間をかけて蔵付きの菌が
旨味を引き出す醤油作り

「若喜商店」の醤油の特徴を教えてください。

 材料は地元産の丸大豆と小麦、赤穂の天塩です。大豆と小麦で麹を作り、塩水と合わせた醪(もろみ)を木桶に仕込みます。醤油もお酒と同じく、雑菌が入るとよくないので、寒い冬に仕込みます。そのまま2年間、木桶で熟成させていきますが、このときに醤油蔵の天井で長年培ってきた菌が発酵を助けてくれます。この菌たちこそうちの宝物。彼らがいないとうちの味は出せません。

2年とは気の遠くなる時間ですね。

 じっくり時間をかける昔ながらの製法だからこそ、おいしさが滲み出るものと信じています。ただ今ではこういった醤油作りは非常に少なくなってしまって、県内でも5軒あるかないか。なるべく長く伝統を守っていきたいので歯を食いしばって作っています。ただ、財産が2年眠ってしまうことになるのは、ちょっと困りますけどね(笑)。

「若喜商店」の醤油は料理人の中にもファンが多いと聞きました。

 大変ありがたいですね。醤油は自然の力を借りて旨みがどんどん凝縮していく、いわば食の豊かさの根源のような調味料です。それに、実はとても万能で和・洋・中なんでも使えるんですよ。ぜひご家庭でもこの醤油を使って料理してみてください。おいしいお料理ができると思います。

昨年、「全国醤油品評会」で、福島県の入賞数が最多となりましたね。

 はい。これまで皆さんとがんばってきた甲斐がありました!福島県には醸造の技術指導をしてくれる福島県ハイテクプラザや、二本松市には「醤油醸造協同組合」「味噌醤油工業協同組合」があり、事業者の情報交換を助けてくれています。こういった組織がない県もあるので、福島県はずいぶん恵まれていると感じます。
 加えて、福島県は畑も田んぼも豊富で、何を作ってもおいしい作物ができます。醸造加工の文化も根付いていて、発酵食品を作るには絶好の場所。“材料”は揃っているので、飲食店や宿とも力を合わせて、発酵の魅力を発信していきたいですね。