KNOWLEDGE 発酵の基本

甘酒

炊いたご飯(またはおかゆ)に米麹を混ぜて、糖化・発酵させる甘酒は「麹甘酒」と呼ばれます。その主成分は、ブドウ糖と麦芽糖なので、優しい甘みが特徴です。エネルギー源となるブドウ糖や麦芽糖、必須アミノ酸、疲労回復を助けるビタミンB群など体に不可欠な栄養素をバランス良く含み、病院で使われる点滴のように、体への吸収がよいことから「飲む点滴」ともいわれます。麹甘酒の他に、酒粕と砂糖、水を使ってつくる甘酒や酒粕と麹甘酒を混ぜたものもありますが、こちらは「糟湯酒(かすゆざけ)」と呼ばれます。

醤油

大豆、小麦、麹菌、塩を原料に発酵させたものが醤油。蒸した大豆と炒った小麦に麹菌をつけて醤油麹を造り、塩水を加えて樽に仕込み、発酵・熟成させたものが「もろみ」です。濾過して、加熱することで醤油特有の食欲をそそる香りが引き出されます。
発酵中に大豆からうま味アミノ酸が溶出し、うま味が凝縮された奥深い味わいとなり、日本の食卓に欠かせないものです。醤油には、味覚を構成する甘み・酸味・塩味・苦み・うま味の5味すべてが含まれます。江戸時代からヨーロッパ中心に輸出されているグローバルな調味料です。

味噌

米味噌は、大豆、米、塩、麹菌を発酵させてつくられます。これらシンプルな材料が樽の中で発酵熟成し、大豆のタンパク質が分解されてアミノ酸が増えることによって味噌独特のうま味が生まれます。
体に無くてはならないアミノ酸である必須アミノ酸9種類が、大豆タンパク質の分解によって生成されるのも特徴で、これらアミノ酸は吸収もよく、この点からも味噌は栄養価が高いとも言えます。味噌汁は、“おふくろの味”の代表格。かつては各家庭で仕込まれた自家製味噌が主流だったこともあり、日々の食卓に並ぶ味噌汁は、懐かしさを呼び起こす滋味にあふれています。

日本酒

日本酒は、米、米麹、水を原料に「清酒酵母」によって発酵させたものです。
現在では、各地域で清酒酵母菌が開発され、土地ごとに異なる風味も楽しめます。また、材料となる米の品種も各県単位で開発され、原料米、酵母、発酵温度、熟成方法などの組みあわせによって、それぞれの蔵元ごとの個性は無限です。各醸造メーカーは技術を磨き、日本酒のおいしさをつくりあげています。日本酒には保湿効果が高い成分が含まれており、昔から酒風呂などにも利用されています。近年の研究では、酒には美白効果があることもわかってきました。

監修

発酵学者 
東京農業大学名誉教授

小泉 武夫 さん

1943年、 福島県の酒造家に生まれる。 農学博士。専門は食文化論、 発酵学、醸造学。現在、 鹿児島大学、 福島大学 、 宮城県立大学ほかの客員教授、 発酵食品ソムリエ講座 「発酵の学校」校長を務める。 NPO法人発酵文化推進機構理事長や全国発酵のまちづくりネットワーク協議会会長など、食に関わる様々な活動を行う。著書は単著で150冊を超え、日本経済新聞掲載の 「食あれば楽あり」は30年に渡り連載中。日本醸造協会伊藤保平賞、日本醸造学会功績賞、福島県知事賞(県外在住功労者) など多数受賞。