INTERVIEW インタビュー

中通り

丸滝/味噌・醤油醸造所 堀切 知之さん

発酵食品は先人たちの知恵の結晶。発酵の文化を受け継いでいく。

醸造元の老舗でいらっしゃいますが、創業は何年ですか?

 明治22年の創業ですからかれこれ130年以上で、私で5代目になります。醤油と味噌を作っていますが、以前は店先の炉端で餅に味噌をつけて焼いた田楽を売っていました。

今も創業当時の味噌づくりにこだわっているそうですね。

 先人から受け継いだ作り方をそのまま続けていまして、糀も自社で手づくりしています。微生物の働きを生かして長期熟成させることで、味噌本来の風味やおいしさを引き出す、先人たちの知恵はとても大切な宝だと思っています。

昔は家で自家製味噌を仕込んでいましたよね。

 どのご家庭でも以前は味噌を仕込む光景が当たり前に見られていましたが、今は少なくなりました。でも震災以降、自分で味噌を仕込みたいという方が増えています。うちでも味噌づくり体験が人気です。
 参加者にはここで茹でた大豆を潰して糀と塩を混ぜたものを自宅に持ち帰っていただいて、半年ぐらい熟成すれば自家製の味噌が出来上がります。始めた当初は50~70代ぐらいの方が多かったですが、最近では30代のお母さんたちの参加が増えていますね。子どもや自分が食べるものだし、自家製で安全なものを食べさせたいという意識が強くなってきているのかなと思います。

発酵食品への理解が深まっているのですね。

 田楽を売っていた頃に甘酒も出していましたが、それはお客さんの要望があったから。でも提供していくうちにだんだん「体にどんな影響があるのか」と考えるようになり、商品開発につながった感じですね。
 甘酒は今でこそ、飲む点滴と言われたり腸内環境を整えてくれるとも言われますが、昔の人は体にいいから飲もうなんて思っていなかったのではないかと思います。でも飲んだ人が実感したからこそ、現代にも受け継がれているのではないでしょうか。

いいものは受け継がれるわけですね。

 発酵食品は菌の力と先人たちの知恵の結晶といっても過言ではありません。時代が移り変わっても発酵文化は残していかなければいけないと思います。