INTERVIEW インタビュー

中通り

鈴木醤油店 鈴木 良浩さん

時の流れと自然の力でゆっくりと。
手づくりから生まれる味わい深い醤油。

蔵に入ると、とてもいい香りが漂ってきますね。

 創業130年の歴史が醸し出す香りというか、蔵に染みついた醤油と味噌の香りですね。それにうちは木桶が8本と麹室があるだけの小さな蔵なので、よりそれが感じられるのかもしれません。私で6代目になりますが、作り方は昔と変えていません。醤油は大豆と小麦、塩のみを使う醸造法で仕込んでいます。麹は「麹蓋」と呼ばれる木製の盆を用いる「麹蓋製法」でつくっています。その麹と塩水を混ぜてもろみにして、木桶で仕込む。そのもろみを櫂棒(かいぼう)と呼ばれる道具で攪拌して、3年かけてじっくり寝かせます。

3年も!長い時間をかけてつくるんですね。

 醤油の標準的な熟成期間はだいだい10ヶ月ですが、うちでは昔ながらの造り方をしており、天然醸造で、また手作業によるところが多いので、ゆっくりと時間をかけて仕上げています。醤油づくりには昔の職人さんの言葉で「色1年、香り2年、味3年」という格言のようなものがあります。私たちの蔵において、より美味しい醤油にするためにはやっぱり3年くらいは必要かなと思って続けています。
 仕込みは毎年1月から3月上旬に行いますが、年によって気温は異なりますし、また、大豆や小麦は同じ産地のものであっても、毎年同じというわけではありません。置かれた環境で職人が手を尽くし、大豆や小麦の美味しさを醤油に落とし込むことが私たちの役割だと思っています。
 機械化したり、効率的に仕込んだとしても、美味しい醤油はつくれると思いますが、自分たちの蔵にしかできないことをしたいと考えています。私たちは醤油づくりにおいて、受け継いできた伝統を活かしながら、私たちの蔵だからこそできることを探求しながら、醤油づくりに日々向き合っています。

まさに「手塩にかけて」ですね。

 醤油に限らず発酵食品は手間暇をかけることでよりおいしくなります。急がず慌てず、ゆっくりと向き合って、いいものを作っていきたいですね。

深い味わいの手づくり醤油、お勧めのいただき方はありますか。

 まず、炊きたての白いご飯にちょっとだけ垂らして食べていただきたいですね。醤油の芳しい香りと塩味がお米の甘さやおいしさをより引き立たせます。
 あと、定番ですが卵かけご飯。先にご飯に醤油をかけてから卵を絡めて食べる。この食べ方だと卵の味の輪郭がはっきりすると、試した皆さんはおっしゃいます。ぜひ試してみてください。