INTERVIEW インタビュー

中通り

宝来屋本店 代表取締役 柳沼 広呂人さん 宝来屋本店 専務取締役 工場長 柳沼 真行さん

先人たちが残した発酵文化を紡いでいくため、伝統を守りながら、新しい発想で発展させる。

近年は発酵食品が注目されていますね。

 当社は創業当時は糀(こうじ)専門店で、今は味噌や三五八漬けの素、あま酒などの多くの発酵食品を取り扱っています。長い歴史がある発酵食品は確かに再評価を受けていますが、昨今は食生活の多様化や共働き世帯の増加、核家族化などで食事を作る機会が減っている。それに合わせて味噌、醤油の消費も実は減っています。私どもも、創業から100年以上にわたり育んできた発酵文化をどのように残していくか、ということを考えているところです。

食や生活習慣の変化で健康志向の方が増えているとも聞きますが。

 そうですね。健康や身体のことを考えて、自分たちは普段どんなものを食べているのか、ということに関心を持たれる方は増えています。それに伴って子どもたちにも安全なものを食べさせたいと思う方も増えていて、例えばオンラインで味噌づくり教室を行うと多くの方が参加されます。安全・安心なもの、本物を食べたいというニーズの高まりがあると思います。
 当社では小学校の工場見学を受け入れていますが、その時に大豆や味噌をビニール越しに触る体験をしてもらっています。味噌づくりを知らない子どもたちには見るもの聞くもの初めてのものばかりで、とても興味深く見学していただいています。お土産に味噌を持ち帰ってもらうんですが、後日、親御さんから「おいしかった」「懐かしい味を思い出した」という嬉しい感想をいただいたりします。我々にできること、些細なことではありますが、子どもの食育や昔の食文化、発酵文化を思い出してもらうきっかけになっているのかなと思うと励みになります。

あま酒のラインナップも実に豊富ですね。

 あま酒も当社の得意とするところです。体の免疫力を上げるとも言われる飲み物として、ここ数年とても注目されています。近年は珈琲屋さんとのコラボレーションや、プロサッカークラブと共同で開発した福島県産の桃の果汁を使ったあま酒も商品化しました。異業種と組んだことで新しい発想が生まれ、我々も多くのことを学ぶことができました。今後もあま酒に限らず味噌や糀など、発酵食品の新しい可能性を探求していきたいですね。