INTERVIEW インタビュー

中通り

矢澤酒造店 代表取締役 矢澤 真裕さん

久慈川の清き水と矢祭の気候風土が醸し出す、料理に負けない強い酒を。

東北最南端の蔵元、矢澤酒造店さんが醸すお酒の特徴を教えてください。

 代表銘酒である「南郷」が誕生したのが、およそ190年前。当時から厳選した酒造好適米と町を流れる清流「久慈川」の伏流水を使用して、昔ながらの手法を用いて酒造りに取り組んできました。
 県内はもとより全国には様々なお酒があり味も香りもそれぞれですが、「南郷」の特徴は、食べ物との相性が抜群にいい。例えばカレーや豚の角煮といった味にパンチがある料理と日本酒は相性的にどうなのかと思われるかもしれませんが、このお酒は負けるどころか料理の旨味を引き上げて、さらに料理によってお酒もより旨味を増します。

カレーや豚の角煮と相性がいいとは驚きです。

 やはり皆さん驚かれますが、とても相性がいいのでやってみてほしいですね。スパイシーな味つけにも負けませんから麻婆豆腐やスペアリブの豆鼓蒸しなんかにも合いますよ。

近年は果物のような香りとスッキリした味の日本酒が好まれていますね。

 いまの流行りはお酒そのもので楽しむタイプです。しかし料理と一緒にということを考えるとなかなか難しい。うちはあくまで料理とともに食事に華を添える食中酒を、という立ち位置にこだわっているので、香りよりはしっかりした味にしています。

料理を引き立たせるお酒は、他とは異なる手法で仕込んでいるんですか?

 特別変わったことしているわけではありません。お酒の旨味はお米の旨味でもありますから、お米を適度に溶かすことが大事です。お米の吸水歩合を厳密に管理して、溶かしつつ溶かしすぎずのところをコントロールして旨味を引き出すようにしています。

長い間地元に愛されてきた「南郷」ですが、これからの展望は?

 「南郷」は地元の皆さんにとても馴染み深く、愛飲されてきたお酒です。私もいちファンとして、江戸時代より続く「南郷」をこの先の100年へ残していくため、守るべきものを守り、変えるべきものは変えていきながら、蔵人と一緒になり、品質本位のお酒を追求していきたいと思います。