INTERVIEW インタビュー

中通り

根田醤油 専務取締役 鈴木 豪彦さん

先人たちの努力を受け継いで、昔ながらの製法と本物の味を守り続けていきたい。

大きな土蔵ですね。蔵戸や梁が長い歴史を感じさせます。

 震災で土壁が崩れて一部改修したところはありますが、夏の暑さや冬の寒さから醤油と味噌を守り続けてきた土蔵だと思うと感慨深いものがあります。この蔵がなければ「根田」の味もなくなっていたのではないでしょうか。

木桶は創業当時から使い続けているものですか。

 創業当時のものというわけではないと思いますが、私が物心ついた時には既に今の木桶でした。木桶はだいたい100年から150年使えると言われていますが、時代の流れもあり当蔵ほど大きな木桶をいくつも使っているところは全国の老舗でも少なくなってきたのではないでしょうか。
 近年は木桶の材料の確保が難しくなったことや作る職人さんが減ってしまったこともあり、新調するのも大変です。生産効率を重視してプラスチックやステンレスに代えるところもありますが、木桶は他の素材に比べて外気の影響を受けにくく、適温適湿に保つことができるため、熟成に適した環境を作ってくれます。長い期間使い続けることで菌が棲みつき、味や風味に個性が生まれます。

「蔵つき」「桶つき」の菌が旨さを作り出しているんですね。

 醤油や味噌のおいしさは土蔵や木桶に棲みついた乳酸菌や酵母の作用もありますが、原点は独自の製法で作る良質な麹があるから。それらが相まって、うちのおいしさを醸し出していると思います。
 これまでやってきたことから発展して新しい味を作り出すことも大事なことだと思いますが、当蔵では先人の作り手がやってきたことを守り続けることにこだわりと誇りを持っています。新しい味を作り続けることも、伝統を守ることも両方大事だと思っています。

伝統があってこそ、進化があるというわけですね。

 伝統や歴史を捨てることは簡単ですが、守り続けることは容易ではありません。当蔵のように昔ながらの製法にこだわっているならなおさらです。近年は質のいいもの、本当においしいものを求める消費者が増えています。そうしたニーズに応えるためにも、これまでの手法を守り、味は進化させる。難しいことですが、それが私たちの役目かなと思っています。