INTERVIEW インタビュー

会津

豊國酒造 代表取締役 高久 禎也さん

地に足をつけた酒造りを続けているからこそ、海外に目を向けた新しい挑戦ができる。

創業160年になるとのことですが、今と昔、酒造りはどのように変わりましたか?

 私で5代目になりますが、変わったところは杜氏が常駐するようになったことですね。昔から酒造りの時期になると新潟から越後杜氏、岩手から南部杜氏が来て住み込みで酒造りの陣頭指揮をとっていました。うちでも先代である父の代は越後杜氏が来ていましたし、代替わりするタイミングで南部杜氏が来て酒造りをしていました。でも私の代になってからは、私が杜氏をやるようになりました。
 昔の蔵元は酒造りと経営を分けて行うことが当たり前でしたが、今は中小規模の蔵元だと杜氏も経営も兼ねているところがほとんどではないでしょうか。

酒の良し悪しを決める米や水へのこだわりは。

 うちで使用する酒造好適米は契約している地元農家さんが栽培する山田錦や夢の香ですが、次の仕込みからは「豊国」という品種の米も使用する予定です。「豊国」という米で「豊國」を仕込む。全国でもうちだけでしょうね。
 酒を仕込むためには水も大切ですが、原料処理の洗米の作業を大切にしています。これだけはすべて手作業。およそ700キロの原料米を4人で手分けして洗います。この作業が雑になるとお酒の味が濁ってしまうというか、スッキリしません。

今後はどのような酒造りをされていかれますか。

 今、力を入れているのがスパークリングタイプのお酒です。原酒に7日間かけて炭酸ガス注入するものと、瓶内で二次発酵させるものの2種類を造っています。瓶内二次発酵は原酒に「おり」を入れ炭酸ガスを発生させ、最後に「おり」を取り除きます。これはシャンパンと同じ手法で、少数しか仕込むことができません。うちのような小さな蔵にとって大きなチャレンジだと思っています。
 国内の日本酒の需要は減少していますが、輸出は増えています。今後、国内はこれまで通りの日本酒を、そして海外にはスパークリングタイプのものを出していく予定です。うちで仕込んだお酒が海外でどのように評価されるのか造り手としてはドキドキですが、世界に通用する酒造りを今後も続けていきたいと思います。